2017年11月9日木曜日

炭水化物が7割超になると死亡リスク上昇

「炭水化物が毎食7割超え」は注意 死亡リスク上昇

2017/11/6



炭水化物(糖質+食物繊維)の摂取割合が非常に多い人は死亡リスクが高く、脂質の摂取割合が多い人は死亡リスクが低いという意外なデータが、世界の18の国・地域の13.5万人以上を対象にした研究で得られました。

■「低脂肪食」は本当に健康に良いのか

現在世界的に用いられている食生活ガイドラインは、低脂肪食(総摂取エネルギーに占める脂質の割合が30%未満の食事)を推奨し、さらに脂質のうち飽和脂肪酸(バターやラードなど常温で固まりやすい脂)を不飽和脂肪酸(魚油やサラダ油など常温で固まりにくい油)に置き換えることによって、飽和脂肪酸の摂取量を総エネルギーの10%未満に制限することを推奨しています(日本の状況は記事最後の囲み参照)。

しかし、こうしたガイドラインは、循環器疾患(心疾患や脳血管疾患など)の患者が多く、脂質の摂取量も多い欧州と北米の人々を対象とした研究結果に基づいて作られたものです。そのため、欧米以外の地域にも当てはめられるのかどうかは不明でした。

そこで今回、カナダMcMaster大学のMahshid Dehghan氏らは、低所得国(バングラデシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ)、中所得国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、パレスチナ、ポーランド、南アフリカ共和国、トルコ)、高所得国(カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦)の計18の国と地域で行われた、大規模な観察研究「PURE」に参加した35~70歳の13万5335人(年齢の中央値は50.29歳、男性が41.7%)のデータを分析しました。

研究への参加が決まった時点で、それらの人々の食事の内容を調べ、その後、7.4年(中央値)追跡して、あらゆる原因による死亡(総死亡)、循環器疾患の発症と循環器疾患による死亡などの有無を調べました。炭水化物の摂取量が多かったのは中国、南アジア、アフリカの国で、脂質の摂取量が多かったのは北米と欧州、中東、東南アジアの国、たんぱく質の摂取量が多かったのは南米と東南アジアの国の人々でした。

炭水化物、脂質、たんぱく質のそれぞれから摂取したエネルギーが総エネルギー量に占める割合を計算し、最も少ない人から最も多い人までを並べて5等分しました。それら5群のうちの最低群を参照として、最高群の総死亡と主要な循環器疾患(循環器疾患による死亡、死亡を免れた心筋梗塞、脳卒中、心不全)のリスクを評価しました。

■炭水化物が7割超になると死亡リスク上昇が有意に

追跡期間中に5796人が死亡しており、うち1649人が循環器疾患による死亡でした。また、4784人が主要な循環器疾患を経験していました。

最低群と最高群のリスクに統計学的に意味のある差が見られた項目を、栄養素別にまとめると、次のようになりました。

1) 炭水化物:最高群の死亡リスクは28%増

炭水化物については、最低群(総エネルギーに占める炭水化物の割合の中央値が46.4%)と比較した最高群(同77.2%)の総死亡のリスクは28%高く、摂取量が多いほど死亡リスクは高い傾向が見られました。最高群では、循環器疾患以外による死亡のリスクも36%高くなっていました。

摂取量の増加とリスク上昇の関係を調べたところ、総死亡のリスクは、総エネルギー量に占める炭水化物由来のエネルギーが60%を超えたあたりで上昇傾向を示しました。おおよそ70%を超えると、リスク上昇は統計学的に意味のあるレベルになり、それ以降も上昇は続くことを示す結果が得られました。70%を超えると、主要な循環器疾患のリスクも急上昇していました。

2) 脂質:最高群の死亡リスクは23%減

脂質については、炭水化物とは反対に、最低群(総エネルギーに占める脂質割合の中央値が10.6%)に比べ最高群(35.3%)の総死亡リスクは23%低くなっていました。同様に、脳卒中と、循環器疾患以外による死亡のリスクも低くなっていました。

脂質の総摂取量の増加とリスク低下の関係を調べたところ、死亡リスクは、総エネルギー量に占める脂質由来のエネルギーが15%を超えたあたりから、統計学的に意味のある低下を示し、しばらくはその値を維持していました。さらに30%以上になると、摂取量の増加に伴いさらなるリスク低下を示しました。

飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の摂取はいずれも、少ない人より多い人のほうが、総死亡リスクと、循環器疾患以外による死亡のリスクは低いことが示唆されました。

3) たんぱく質:最高群の死亡リスクは12%減

たんぱく質摂取量についても、最低群(総エネルギーに占めるたんぱく質割合の中央値が10.8%)に比べ最高群(19.7%)の総死亡リスクは12%低く、循環器疾患以外による死亡のリスクも15%低くなっていました。なお、動物性たんぱく質の摂取は総死亡リスクの低下に関係する一方で、植物性たんぱく質の摂取は総死亡リスクに影響を及ぼしていませんでした。

これまでに欧米で行われた研究と比べると、今回の分析対象となった人々の炭水化物の摂取量は多く、およそ4分の1が総エネルギー量の70%超を炭水化物から摂取していました。

今回の研究は、「総エネルギー量に対する炭水化物由来のエネルギーの割合が高すぎる人は総死亡リスクが高い」こと、「脂質摂取量は、少ない人より多い人のほうが、総死亡リスクは低い」ことを示しました。著者らは、「低所得国の食生活は、炭水化物の摂取量が非常に多く、それも精製穀物が中心であるため、炭水化物を減らして脂肪からエネルギーを摂取したほうがよい」とし、食生活に関する世界的なガイドラインの再考が必要との考えを示しています。

論文は、2017年8月29日付のLancet誌電子版に掲載されました[注1]。

[注1] Dehghan M, et al. Lancet. 2017 Aug 28. pii: S0140-6736(17)32252-3. doi: 10.1016/S0140-6736(17)32252-3.

【日本人の食事に占める炭水化物の割合は58.4%】

厚生労働省は、日本人の食事摂取基準(2015 年版)で、炭水化物の食事摂取基準(総エネルギーに占める割合)の目安量は、年齢と性別にかかわらず、50~65%としています。また、総脂質量の目安量は、1歳以上では年齢と性別にかかわらず20~30%となっています[注2]。

また、平成27年国民健康・栄養調査によると、日本人の炭水化物由来のエネルギーが総エネルギーに占める比率の平均は58.4%で、どの年代でもほぼ同様であり、最も多かった70歳以上の人々でも60.8%でした。脂質は平均26.9%で、小児と若者では若干多く、70歳以上ではやや少なくなっていました。

[注2] 日本人の食事摂取基準(2015年版)

参照元 : 日経Gooday




血糖値の急上昇を避ける3つの食べ方 油や酢を味方につけ、野菜からゆっくり

2014/12/22



一大ブームを巻き起こした糖質オフダイエット。チャレンジしたことのある人も多いだろう。しかし、「確かにやせた。でも、リバウンドした」という人もまた多いのではないだろうか。実は、糖質オフダイエットの極意は、完全オフではなく“ちょいオフ”なのだ。ハードな糖質制限に挫折した人こそ必読! 地味ながらも効果的な糖質オフ術をご紹介しよう。

糖質ちょいオフダイエットの基本は、糖質をとりすぎないことだが、血糖値を急上昇させないこともポイントのひとつだ。

以前の記事「あなたの糖質制限はここが間違っていた」でも述べたが、血糖値が急激に上がるとインスリンが大量に分泌される。それは血糖値を早く下げるためだ。インスリンには、使いきれなかった糖を脂肪に変えて蓄える働きがあるため、大量に分泌されると、太りやすくなる。

大量の糖質をとると血糖値は上昇するが、血糖値の上昇のスピードには、食べ方も大きくかかわる。同量の糖質をとっても、短時間にとるほど血糖値の上昇スピードは早くなる。

だから、食事はゆっくり時間をかけて食べることが、とても大切だ。よくかまずに飲み込むような食べ方や、おかずを食べる前にいきなりごはんをかきこんでしまうような食べ方は血糖値を急上昇させ、肥満を招くインスリンを大量に分泌させることになる。





「血糖値を急上昇させない食べ方は、間食への誘惑を断つのにも有効です」と栗原クリニック東京・日本橋院長の栗原毅氏は言う。

「ランチで大盛りごはんを食べたのに、すぐにおなかが空いて甘いお菓子を食べたくなることがありますね。実は、わたしたちが空腹を感じるのは、血糖値が急激に下がるときです。血糖値を急上昇させなければ、急に下がることもないので、おなかが空いて甘いものが食べたくなることもなくなります」(栗原氏)

血糖値を急上昇させないための、シンプルなポイントを3つ紹介しよう。

■ポイント1 ゆっくりよくかむ

栗原氏は、1回の食事には最低でも15分くらいかけることを勧める。それよりも時間が短いと、満腹感を得る前に食べすぎてしまう。かまずに飲み込むように食べ物を口に入れている人は要注意だ。

ゆっくりよくかんで食べるには、食物繊維の豊富な野菜やきのこ、海藻などのおかずを積極的に食べると効果的だ。一口30回を目安にするといいだろう。また、一口食べるたびにテーブルに箸を置き、会話を楽しみながら食べるのも早食いを防ぐコツといえる。

■ポイント2 食べる順番を変える

同じメニューでも食べる順番を変えるだけで、血糖値の急上昇を防ぐことができる。

「野菜やきのこ、海藻などに含まれる食物繊維には、糖の消化・吸収を遅らせる作用があるので、食事の最初に食べるといい。これらである程度おなかを満たしてから、肉・魚、そしてごはんへと食べ進むのがコツです」(栗原氏)。これだと、ごはんの食べすぎも抑えられるし、血糖値の上昇がゆるやかになる。

血糖値の急上昇を抑える食べる順番
野菜・きのこ・海藻 → 肉・魚 → ごはん・パン・めん

■ポイント3 油や酢を味方につける

三大栄養素(たんぱく質、脂質、糖質)のなかで、血糖値を最も上昇させやすいのは糖質だ。脂質はカロリーが高いので敬遠されがちだが、実は消化吸収に時間がかかるので、血糖値は最も上昇させにくい。



実際、長年の臨床経験を持つ栗原氏は、「糖質と一緒に脂質をとると、血糖値の急上昇を抑えてくれる」と言う。「パンにはバターやオリーブオイルをつけて食べる、かけそばではなく天ぷらそばにして、天ぷらから食べる。これだけでも、食後の血糖値の急上昇をある程度抑えることができます」(栗原氏)。

また、栗原氏は「酢にも血糖値の急上昇を抑える働きがあります」と説く。酢は、ラーメンやチャーハン、ギョーザ、春巻きなどの糖質の多い中華料理によく合い、卓上に置かれている。酢の物やピクルスなど酢を使った料理を最初に食べるのも良いそうだ。酢には高血圧や血中脂質を低下させる働きもあるので、生活習慣病の予防にもいいという。

「オリーブオイルや酢を小さい容器に入れて持ち歩き、外食時にふりかけて食べるのもお勧めの方法です」(栗原氏)。もちろん、油や酢をとったからといって糖質のとりすぎを帳消しにしてくれるわけではないし、やせるわけでもない。あくまでも適正な糖質量の食事を続けることが本筋である。

(文:川崎敦子=フリーエディター・ライター)

参照元 : 日経Gooday





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