2016年7月30日土曜日

一過性脳虚血発作(TIA)は脳梗塞の前触れかも

「一過性脳血虚発作」に気を付けろ! 夏に起きる脳梗塞前のシグナル(1)

2016年07月23日 10時00分



まず、一過性脳虚血発作というのはどんな病気なのか。

「脳に行く血液の流れが悪くなり(脳虚血)、様々な神経症状が出現します。ただし、大半がすぐに自然とよくなり、症状もなくなる。完全にもとの状態に戻ってしまうということです」(専門医)

しかし、短時間の障害とはいえ、症状を調べるとその内容はかなりひどい。片側の手足や顔のマヒなどの運動障害、しびれや感じ方が鈍くなるなどの感覚障害、さらに呂律が回らなかったりの言語障害なども起きる。

「片方の目が見えにくくなる視力障害(一過性黒内障)なども起きることがあります。いずれも脳血管にできた血栓が一時的に詰まって起きる脳梗塞と同じ症状が一時的に表れ、血流の再開とともに、すぐに消えるのが特徴とされます」(同)

東京都多摩総合医療センター血液内科の担当医はこう説明する。

「症状が出る時間は、多くは1時間以内で、通常20分程度。数時間続いた場合には、約半数が脳梗塞を起こしています。症状が出ている時間が短いため放置されやすいものの、この時点できちんと治療すれば本格的な脳梗塞を防げるのです」

前述したような症状が出た後、すぐに治療しない場合は約3分の1が発作を繰り返し、約20%は90日以内に脳梗塞を発症するという。中でも最も危険度が高いのは、発作後48時間以内に発病した時だ。

「しかし最近では、脳梗塞の発症を臨床的特徴から予測できるようになりました。注目する特徴の5項目の頭文字から名付けた“ABCD2スコア”といものが用いられます」(同)

A(age)は、年齢が60歳以上…1点、B(blood pressure)は血圧の上が140以上、または下が90以上…1点。C(clinical features)が臨床症状として片側にマヒがある…2点、マヒはなく言語障害…1点。D(duration)は症状の時間が60分以上…2点、10~59分…1点と、糖尿病(diabetes)…1点。

これらの合計点数が高いほど、脳梗塞の発症率が上昇する。例えば、7点では2日以内が約8%、30日以内が約17%、90日以内が約23%となる。

「ただし一過性脳虚血発作には、脳梗塞と同じような緊急を要する治療が必要になる場合があります。そのため、普段から脳梗塞を適切に治療できる病院などの医療機関を調べておく必要がある。受診には神経内科が適していますが、脳梗塞を診ていない病院もあるからです。日本脳卒中学会のホームページには、脳梗塞を専門に診る医師がいる『脳卒中学会認定研修教育病院』の一覧が掲載されています」(前出・専門医)

一過性脳虚血発作の時の検査については、MRIとMRA(血管撮影)で脳梗塞発症の有無と脳血管の狭窄部分を調べることができる。

血栓ができる原因部位で最も多い頸動脈(首)は、超音波検査を行う。血栓が心臓から飛び血管が塞がれる疑いがある場合には、心電図で心房細動が起きていないかを確認するという。

「その際、治療の目的は脳梗塞予防になる。血栓の原因が首や脳にあれば、抗血小板薬、心臓に原因あれば抗凝固薬の服用を始めます。ただし、頸動脈が70%以上狭窄していれば、血管内治療でステント(拡張筒)を留置し、動脈内膜をきれいにする手術を行うことになります」(医療関係者)

参照元 : 週刊実話


「一過性脳血虚発作」に気を付けろ! 夏に起きる脳梗塞前のシグナル(2)

2016年07月24日 10時00分



治療方法も、近年は選択肢が広がっている。まず、血栓を作らないように予防的に長期に薬を飲み、前述の通り血液をサラサラにする抗血小板薬や抗凝固薬のいずれかを用いる。

「抗凝固薬は2011年、半世紀ぶりにそれまで用いられていたワーファリンに変わりうる『ダビガトラン』(商品名=『プラザキサ』)などや、『アピキサバン』(商品名=『エリキュース』)という新薬も次々と承認されました。これらの新薬は唯一の抗凝固薬だったワーファリンと比べると脳出血の副作用が少なく、副薬量を決めるための採血も必要なくなるのです」(前出・専門医)

しかし検査の結果、あまりにも頸動脈が狭い場合は、内膜をくりぬく手術である内膜剥離術を実施することもある。

一過性脳虚血発作を引き起こす危険因子は、高血圧や高血糖、高脂血症に加え、たばこやストレス、運動不足などだ。

専門家の一人は言う。

「遺伝や加齢の要因もあるが、生活習慣を改めることで理論上は8割の一過性脳虚血発作や脳梗塞を予防できる。健康診断で自分の数値を知り、基準値を超えているなら、リスクが溜まっていることを自覚する必要があります」

また、この病は、網膜や腎臓に糖尿病による合併症を引き起こした場合、失明や腎不全の原因になりやすい。

「健診などで“糖尿病の疑いがある”とされた人も、その後検査をしないでいると知らないうちに糖尿病になっていることがあるため、注意が必要です。糖尿病の治療は、食事、運動療法が基本ですが、薬物治療としては血糖を下げる血糖降下薬という飲み薬と、インスリンがほとんど分泌されない人や不足している人にはインスリン注射を打ちます」(前出・専門医)

この糖尿病を含め、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病の指摘を受けた人には、食事療法が欠かせない。

「高血圧の人には減塩が効果的で、1日食塩摂取量6グラムを守るようにしましょう。カロリーや脂肪分を抑え、バランスのある食事を摂ることは、糖尿病や脂質異常症の改善、生活習慣病悪化の下地となる肥満の抑制にもなります。また、過度の飲酒は肝臓を悪くするだけでなく、脳卒中のリスクも高めます。1日の飲酒量は日本酒なら1合程度、ビールなら中瓶1本程度。そして“休肝日”を設けることも大切です」(同)

さらに、運動療法の必要性について。適度な運動は生活習慣病を改善させ、脳卒中の予防につながるという。特に激しい運動をする必要はなく、1日30分のウオーキングで少し汗ばみ、息が弾む程度が目安。糖尿病の患者では、食後1~2時間後に行うと食後血糖の上昇が抑えられ効果的という。

自分や家族のためにも、日頃から心掛けよう。

参照元 : 週刊実話


一過性脳虚血発作(TIA)の症状や原因・診断と治療方法



一過性脳虚血発作(TIA)とはどんな病気か

一過性脳虚血発作(TIA)とは、脳に行く血液の流れが一過性に悪くなり、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れ、24時間以内、多くは数分以内にその症状が完全に消失するものをいいます。脳梗塞(のうこうそく)の前触れとして重要です。

原因は何か

大きく分けて2つあります。ひとつは血管の壁にできた小さな血栓(けっせん)が脳内の動脈に流れていく場合です。頭蓋骨外の頸動脈や椎骨脳底動脈(ついこつのうていどうみやく)のアテローム硬化病変がみられる部位から微小な血栓がはがれて、脳内の血管へ飛んで詰まり、症状が現れます。脳の血管が詰まると、その部分の組織の循環と代謝に障害が起こり、機能が停止します。脳の機能はそれぞれの部位で違うので、損なわれた部位により症状は違ってきます。血栓がその場所で詰まったままで、その組織の障害が元にもどらないほどの程度になると、脳梗塞と呼ばれる状態になります。

しかし血栓が小さかったり血栓の詰まり方が弱いと、いったん詰まった血栓は自然に溶けて再び血液が流れるようになり、症状は消失します。この状態がTIAです。心臓弁膜症(しんぞうべんまくしょう)、心房細動(しんぼうさいどう)、心筋梗塞(しんきんこうそく)などの心疾患が原因になる場合もあります。ごくまれに、線維筋形成不全症(せんいきんけいせいふぜんしょう)という血管の奇形や血管炎などが原因になることもあります。

もうひとつは、血圧が急激に低下する場合です。もともと動脈硬化があることから太い動脈の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)があり、これに全身の血圧の低下が加わり、脳への循環が悪くなる状態で、脳血管不全(のうけっかんふぜん)とも呼ばれます。

TIAが臨床的に重要なのは、脳梗塞の前触れになるからです。TIAがあった場合、約10%が1年以内に、約30%が5年以内に脳梗塞を発症するとされています。

症状の現れ方

TIAの発症は急激で5分以内に症状が完成し、2〜30分(多くは数分)続きます。大脳へ行く血管系には内頸(ないけい)動脈系と椎骨(ついこつ)動脈系とがあります。内頸動脈系のTIAでは半身の運動麻痺、感覚鈍麻(どんま)、失語症(しつごしょう)(言葉が言えない、理解できない)、片眼の視野障害などの症状がみられます。椎骨脳底動脈系のTIAではめまい、構音障害、物が二重に見える複視、意識障害を伴わないで下肢の脱力のために転ぶドロップアタックといった症状がみられます。

検査と診断

診断には頸動脈の超音波ドプラー検査が有用で、血管の内中膜の厚さや、動脈硬化の指標になるプラークの状態を調べます。血管の病変が原因のTIAでは、詰まりの源になる脳血管の病変を調べることが重要で、脳血管撮影を行い、その狭窄部位と狭窄の程度をみます。

拡散強調画像MRIは急性期の脳梗塞の有無をみるのに有用です。頸部から血管の雑音を聴き取ることもあります。心疾患が疑われる場合には心エコー検査を行います。

治療の方法

TIAは多くの場合、診察時には症状がおさまっているので、再発予防が重要です。そのためには脳梗塞の危険因子となる高血圧、糖尿病、脂質異常症の管理、禁煙指導、心疾患の治療、経口避妊薬の中止、運動指導などを行います。

再発予防のための薬物治療としては、抗血小板薬であるアスピリンまたはクロピドグレルまたはシロスタゾールを用います。TIAの最後の発作から少なくとも1年以上は投与し、基礎疾患のある場合にはさらに長期にわたり投与します。心臓からの血栓が塞栓(そくせん)(詰まり)の原因の場合には抗凝固療法を行います。

頸動脈の血管病変がひどく70%以上の狭窄がある場合は、頸動脈内膜剥離術(けいどうみゃくないまくはくりじゅつ)と呼ばれる手術が行われます。

一過性脳虚血発作(TIA)に気づいたらどうする

一過性の脳の循環障害の症状は、脳梗塞の前触れとして重要です。一過性の脱力、しびれなどの症状が現れ、TIAが疑われる場合は必ず受診して検査を受ける必要があります。

一度TIAを起こした患者さんで、数日以内に脳梗塞を起こすリスクが高いのはどのような人かを予測する方法が提唱されています。スコア(得点)方式で、(1)年齢が60歳以上はスコア1、(2)血圧が14090mmHg以上はスコア1、(3)臨床症状で片側性脱力はスコア2、構音障害(脱力なし)はスコア1、(4)発作の持続時間が60分以上はスコア2、10〜59分はスコア1とします。TIA発症7日以内に脳卒中を発症するリスクは、スコアの合計が4、5、6の時にそれぞれ、2・2%、16・3%、35・5%とされています。スコアの合計が増すほどリスクは大きいので、脳卒中に至る可能性のある人はできるだけ早く治療を開始することが大切です。

2週間以内に4回以上の発作がある場合、2週間以内に頻度、持続時間、重症度が急速に増している場合、心臓の異常が塞栓の原因と考えられる場合は、早期入院が必要です。

参照元 : gooヘルスケア

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